スイス蒸気機関車の旅

シュシュポッポと黒い煙を吐いて力強く走る、SLの愛称で呼ばれる蒸気機関車。
昔はどこの国でも当たり前のように走っていたのですが、今ではなかなか見ることができなくなりました。
スイスは、ほぼ100%という世界一高い電化率を誇る国なのですが、そのスイスにも、昔懐かしい SLを運行させている路線があります。SLの奮闘ぶりを見ながら、素晴らしい車窓の旅を楽しんでみませんか。

ブリエンツ・ロートホルン鉄道

古都ルツェルンとユングフラウ地方への玄関口・インターラーケンを結ぶ「ルツェルン=インターラーケン・エクスプレス・ルート」にあるブリエンツ湖畔と、ロートホルン山頂 直下のロートホルン・クルムを結ぶ登山鉄道です。
SLが先頭から客車を引っ張るのではなく、最後尾から押し上げるように走行します。

お尻を持ち上げて、まるで、つんのめるように連結されたSL。急勾配を押し上げるための独特のスタイルです。 山を登るにつれてボイラーが水平になった SLは、力を振り絞り小さな客車を押して登り続けます。
やがて眼下にエメラルド色のブリエンツ湖や、はるか彼方にユングフラウ、アイガー、メンヒなどの名峰が見えてくると、列車は標高2,244mのロートホルン・クルム駅に到着します。
初夏~秋の運行です。

フルカ山岳蒸気鉄道

氷河特急ルートは、スイスでもっとも人気の高い景勝路線ですが、多雪地帯を走るため、冬は大雪や雪崩に悩まされていました。
かつては冬の間じゅう、線路や、電気をとる架線を外して、すべての列車を運休させてしまうという、信じられない方法がとられていました。 フルカ峠にあるローヌ氷河が車窓から見えることから「氷河特急」という名前が付けられたのですが、最景勝区間の一つであるフルカ峠は最難所でもあり、冬は運休せざるをえませんでした。

沿線住民の悲願が叶い、1982年に、この峠の直下を貫く、長さ15.4Km のフルカ・トンネルが開通し、列車は1年を通じて運行されるようになったものの、そのかわりローヌ氷河は見ることができなくなってしまいました。 そのままにされていた旧線が、2000年に有志たちの手で復活され、アプト式SLが走るようになりました。
列車を引っ張るSL車両は、すでにスイスには残っておらず、遠くベトナムの地から里帰りしたものが、当時のクラシックな客車を引っぱって、古き良き時代の氷河特急を再現しています。
夏期のみ運行です。